第69回  “日本沈没”

 
(1990年東京)


昔親しくしていた方たちが、毎日のようにお亡くなりになるので、仕方なく僕は毎晩お弔い酒を呑むのです。
そんなことを言うと、毎晩飲んだくれる言い訳にしていると思う人もいるかも知れません。 他人様の口に戸板は立てられませんから、僕は黙って粛々と氷を沢山入れたハイボールのグラスを傾けます。  
僕が寂しく呑んでいても鬼界にお入りになった方たちは、もう「アベ。独りぼっちなんだね」なんて言って、昔のように隣に座って一緒に呑んではくれません。  
長生きするということは、生き証人が段々減ってウソが吐き易くなるというメリットばかりではありません。友達がいなくなるのです。  

昭和43年ごろ、僕は当時とても珍しかった有料の講演会を大手町の「日経ホール」でやりました。その当時も今も講演会はほとんどタダで、料金を取る所なんか滅多にありません。 
僕は「日本沈没」で人気絶頂だった小松左京さんと個人的なお付き合いがあったので、有料講演会という興行を企画したのです。これはクドいけど普通のタダの講演会ではありません。1000円の入場料を取ってやる、興行師のやる興行なのです。
その顛末は、この「手配写真??」第10回に詳しく書いてありますのでそちらをお読みください。
この写真は僕が作家になってから対談でお目に掛かった時のものです。
小松左京さんとの話は、書いてもとても信じていただけないようなことが一杯あります。

サヨウナラ。小松さん。