第60回  “あい・らぶ・ウニちゃん ”

 
平成22年3月


四国の松山からやって来たウニは、元気で風邪ひとつ引かずに、この五月十日には満四歳になります。最初は真っ白だった仔猫が、驚いたことにどんどん色が変わって、今では薄茶色の大猫になりました。
馬と猫はまるで逆です。白い馬は「芦毛(アシゲ)」というのですが、仔馬の時は灰色の冴えない様子でも、成長するにつれて白くなります。ウニは首の下とお腹のあたりだけが白く、他は薄いベージュで、顔と手足と尻尾だけ縞の猫になりました。
ウニはとてもお喋りですが、尻尾と耳、それに青い目と髭で喋ることが多いので、何を言っているのか僕にしか分かりません。
三十四センチもある太くて見事な尻尾で、その振り方、動かし方で意味が変わるのですから、猫語はロシア語と同じほど難しいのです。尻尾の先だけピクピクさせると、それは「暇だったら遊ぼうよ」という意味で、根元から上下に大きくバタバタするのは「俺は不愉快だ。いつまでも我慢なんかしないぞ」と喧嘩上等の意思表示なのですから、大学で四年勉強したぐらいでは、猫語は無理です。
ウニは分かり易い猫で、寝る・食べる・甘える・それに遊ぶしかありません。ウニの一日は、僕たちのように二十四時間ではなく、六時間単位です。三時間寝て、食べる、甘える、遊ぶにそれぞれ一時間づつ使います。
ウニは丸くなったり鰻みたいに長くなって三時間機嫌良く寝て、突然起きてノビをすると大アクビをします。この時よく観察すると猫には食べ物をすり潰す臼歯が無いことに、皆さんは気が付くでしょう。だから猫に節分の煎った大豆をあげても、ポロポロ落とすだけです。
ウニは僕のことを「頑丈で壊れないサンドバッグ」だと思っているのです。僕は遊び相手で、スリスリしたりゴロゴロ言ったりする対象じゃありません。残った一時間、ウニが甘えるのは女房です。
見ていると腹が立つほど、身も世もなく女房に甘えます。2メートル離れていても聞こえるほど喉を鳴らして、額を擦り付け、伸び上がって女房のオデコまで舐めるのですから、他人に見られたら仲を疑われます。
僕はウニが可愛くて可愛くてたまらないのですが、この気持が一方通行なのが気に入りません。女房にはあんなに甘えるのに、僕には甘えません。ちょっとからかってやると鼻を膨らませて「やるか」と、遊びモード全開になるのです。
ああ、なんだか哀しくなって来ました。お願い、僕にもスリスリ・ゴロゴロしてぇ〜。