第36回  “グラン・カナリア島”

 
1996年


 
このグラン・カナリア島はスペイン領ですが、本国と一千キロも離れたアフリカの沖にあります。
大昔の大航海時代から西へ向かう船は皆、この島で水と食料の補給をしました。コロンブスのサンタマリア号も、此処で最後の補給をしたのです。
僕は今から十年前に、この島に行ってマグロを釣りました。NHK BSスペシャルの、「ぼくとマグロとホセ船長」というTV番組です。
「神様のお造りになった島」と呼ばれるこの島は、それは美しい島でした。

この島の漁師は、二百キロもある本マグロを、釣り竿もリールやウインチも遣わずに、手釣りで獲るのです。
僕は四十五キロほどのキハダマグロを、二本釣りあげましたが、本職の漁師は目もくれないキハダマグロでも、僕は嬉しくて涙がこぼれました。
そして僕はこの島で、少年院から一緒にウサギした(ピョンと跳ぶ印象から、逃亡することをこう言います)小鉄と四十年振りで再会したのです。

小鉄は背は昔の渾名のままでしたが、立派な蛸の選別加工工場の社長になっていました。アフリカで獲れる蛸はほとんど、小鉄がボイルして選別し、日本に送られるのです。
僕と小鉄は、しっかり抱き合って「無事だったか……」と、叫び合いました。

こんな奇遇はウソみたいですが、NHKのスタッフが見ていたのですから、小説にはなりませんが本当なんです。