第16回  “極道渡世の素敵な面々”


1988年4月


東映の天尾プロデューサーと一緒に安藤昇さんのお宅に、台本を持って御挨拶にうかがったのは、その映画の原作が僕の若い頃の物語だったからです。
ドジで間抜けでオッチョコチョイだった僕ですが、足を洗って作家になっても、元親分には礼を尽くさなければ他人様に嘲笑われてしまいます。
「渋谷の頃の私の話が映画になることになりましたんで、御挨拶にうかがいました」 と、シャッチョコばった僕に、パラパラと台本をめくった安藤昇さんは、
「ウン、いい本だな。本の良し悪しで映画の仕上がりが分かる」
本と言ったのは脚本のことです。
1964年に一家を解散した親分は、突然、映画俳優になって子分だった僕たちをのけぞらせました。
渋谷の安藤組には、本当に親分を始めとして異色の人物が揃っていたのです。
安藤昇さんは三十八本の映画に主演したのですから、こんなヤクザは他に居ません。
「ショーケンの“拝啓おふくろ様”以来だから、八年振りだけど、お前の映画なら出ないわけには行かないだろ。ヨシ、この役をやってやる」
親分が機嫌よく、台本を指差して言ったのは、僕がやることになっていた牧師の役でした。
「その役は自分がやることになってるんです」 なんて、そんなこと、元最末端の若いモンが言えるわけがありません。
安藤昇さんは、楽しそうに牧師を演じて賛美歌まで荘重に唄いました。
役を取られた僕は仕方なく、仲人の役をやったのですが唄うシーンはありませんでした。

その時のメンバーを書いておきます。
企画   天尾完次
監督    和泉聖治
助監督  竹安正嗣
脚本   松本功 
平川輝治 和泉聖治
原作   安部譲二
撮影   姫田真佐久
音楽   久石譲
美術   中村州志
照明   山口利雄
編集   西東清明
出演   陣内孝則  麻生祐未 室田日出男 伊東四朗 中原理恵 成田三樹夫
     あべ静江 安部譲二 安藤昇