第269回 『嵐の選挙』


“呑む、打つ、買う、の噺”は一回休んで、大雨の選挙の話を書く。  
間もなく寿命が来る俺だが、どうしてもこれを吐き出しておかないと、毒が体内で異常発酵して頓死する。今の俺は毎日喰って寝て、こうして文章を綴ることを除けば、ほとんどの時間を考えることに費やしている。  
選挙の前の一週間は、どうしたら剛力彩芽チャンと余人を混じえず二人きりで会えるか、ということばかり考えていた。こんな内緒ごとは女房殿は勿論、兄弟分のウニにも相談出来ないから、とつおいつ、あれこれひとりで考えるしかない。コロンブスは乗組と一緒だったから新大陸を発見した。ライト兄弟も二人だから、虫と鳥と天使以外は飛べないと言われていた空を飛んだ。  
俺はいい手が思い浮かばずに貴重な一週間を無為に過ごした。死を前にすると全く無為に過ごした一週間は、まるで安倍晋三の十年間に等しい。
思い出してみれば、その前の一週間は煮物のことばかり考えていた。  
牛肉の角切りを、何で出汁を取って、何と一緒に味醂醤油で煮るかだが、これが考えれば考えるほど難しい。コンニャクひとつにしても、切って鍋に入れるか、手で千切るか、いっそ糸コンニャクにするか、カブとシイタケはどのタイミングで鍋に入れるか、考え出すときりがない。  
考えがまとまらないままともかくやってみようと台所に行ったら、29年も一緒にいる連れ合いが、俺が一週間悩みに悩んだことを、ピタゴラスか聖徳太子のようにチャチャッと手際よく解決してくれたのだった。  

俺は、連れ合いという言葉が気に入っている。煮物は連れ合いの手慣れた技のお陰で、ウニがあくびをする間くらいの短時間で驚くほど美味しく出来たのだが、剛力彩芽チャンの案件はいい手が編み出せないまま、台風が近づいてモリカケ隠しの選挙になった。
久しぶりの土砂降りの雨の中、俺は連れ合いを連れて家から70歩の投票所に行く。一緒に行ったのではない。連れて行ったのだ。実際は完膚なきまでに尻に敷かれていても、一歩表に出れば俺は一家の長なのだ。  
俺は何年か前の選挙で、隣のブースに入っていた女房殿に、「蓮舫のホウは、舟偏に方角のホウだぞ」と大声で教えてやって、それ以来徹底的にバカにされている。女房殿は蓮舫が嫌いだ。俺は恥ずかしいことばかり、これでもかというほどやって来た人生だが、首が細くてうなじが綺麗な蓮舫チャンに惹かれたのが悔やまれてならない。  
何年か前に連れ合いに決定的に軽蔑される原因になった蓮舫チャンは、今では党首も降ろされて存在すら危うくなった民進党で鳴りを顰めている。
鈴木宗男に品位の無さも所作も生き写しの娘や、スイカを二秒半で食べられそうな松島みどりが今のトレンドらしいから、もう日本は自公政権や腐れマスコミと共に滅びる。  
俺と連れ合いは、誰に投票したか言わないし、相談したことも一度もない。  
今度の選挙は大八百長だと、俺は投票日の三日前に気が付いていた。  
手下のマスコミがいくらデッチ上げ煽り立てても、このままだと不人気になって政権を喪うことになると青くなった安倍晋三は、日本会議の仲間の小池百合子に頼み込んで、オリンピック利権を森喜朗から取り上げることを条件に取引した。権力が三度のメシより好きな小池はこの話に飛びついて、民進党の青二才を手のひらの上でコロガして、野党をバラバラにしたのだ。  
俺が雨の中を投票所に行った時、小池はパリでシャンパンを呑んでいた。
律儀で誠実な日本人がこの安倍晋三の絵図に気付かず、半分しか投票に行かなかったのは、昔から21世紀の今日まで日本人はマスコミにいいように騙され続けているからだ。日本で一番悪い奴は暴力団や銀行ではない。大新聞とテレビなんだ。  
日本人は自己主張しないし、調和を乱すのも嫌いだ。何となく皆んなが歩いていく方向についていけば何とかなると思っている。暴動や争乱は決して起こさない。  

今度の選挙で俺が喜んだのは、中川郁子というクソ女が落選したことだ。
山尾志桜里が無所属で当選したのは、本当に凄い。愛知7区の方たちに居酒屋やビアホールで会ったら、一杯御馳走すると俺は約束する。色事で迷惑するのは両方の家族だけだ。そのことを愛知7区の方たちは、ちゃんと知っていらした。  
魚屋の親爺が洗濯屋のおかみさんと寝たって、商売には関係ないだろ。自分たちの税金を使っているのだから…と皆んな言うが、そんな品行方正な政治家なんて今までいたか?私生活が無茶苦茶な政治家を俺は何人も知っているぞ。  
それに比べて、あのみっともない稲田元防衛大臣や金田元法相を当選させた人たちは、俺の住んでいる杉並には来るな。  
俺は老い耄れたが、ウニはますます勇猛果敢で毎日ツメを研いでいる。
正義の猛猫だから非道い目に遭うぞ。




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