第262回 『どうってことない俺の近況』


他人は俺の事をどう思っているのか知らないが、俺はものを考えていないように見えて、実はミケランジェロやアルキメデスのように、いつでも考えている。  
人にとって一番大切なことは、豊富な知識と教養を基にして良く考え、そして決断し、実行する勇気を持つことだ。  
知識と教養、それに決断と勇気を身に付けることが、人生を全う出来る両輪になるのだと俺は信じている。(俺の場合は知識と教養がとても偏っていたから若い頃ズッこけた)
日本の総理大臣は思い込みが激しく、豊富どころか、知識と経験が極端に欠落している人なのに、愚かな決断だけはやってのけるのだから始末が悪い。アベノミクスだかなんだか知らないが、こういうのに自分の名前を冠するセンスが最悪だ。  
これじゃ国民はまるで腹をすかせたライオンを枕にして、嘘しか書いていない大新聞を読んでいるようなものだ。いつ命が奪われるか分からない状態だと俺は思っている。  
大野伴睦先生にとても良くしていただいた俺だが、もう四十年以上、自民党と公明党には投票した覚えがない。  

ここ五年ほど俺が、ああでもないこうでもないと考えあぐねているのは、玄関の脇、俺の仕事部屋の並びにある五坪ほどの空き地をどうするかということだ。  
中島らもが来た時に、ここは駐車スペースで、俺が大好きだったランドローバーのディスカバリーが停めてあって、それにもたれかかって二人で煙草を喫んだ。俺より先に亡くなった連中のなかでは、中島らもと樋口修吉が鬼才だ。他に褒め言葉は思い付かない。  
ここ暫く俺は本ばかり読んでいた。山本一力さんがジョン万次郎を描いた「ジョン・マン」を五冊、「ナニワ金融道」を文庫版で十册、グリコ森永事件をモチーフにした「罪の声」を一冊。  
テレビが面白くないから、目が疲れるけど暇に任せて俺はひたすら読み耽る。そうそう、たいていのテレビCMは嫌いなのだが、ドコモのDポイントの中条あやみチャンはいい。笑顔がキュートだ。ポインコ人形も楽しくて、 このCMの時だけ俺はテレビの前でニコニコしている。  
絵はあまり上手くなくて、ひとコマに何人も描いてあるとみんな同じ顔で分かりづらいのだが、「ナニワ金融道」は、俺のよく知る世界を上手く描いていてとても面白かった。  
俺もまだ作家の看板を下ろしたわけじゃない。明日から五坪の空き地の有効利用について考えるのは中断して、書きかけの小説の続きを書こう。戦後すぐの対日感情が最悪だったヨーロッパを、カタギとは言えない青年二人が何も考えずに、けど命懸けで彷徨う話だ。その頃の話をカタギの視点から書いた小説や紀行文は珍しくない。しかし七十九歳九ヶ月の俺だけが書ける小説なんだ。  
主治医は去年の四月くらいまでの命だと言ったが、もう少しイケそうだ。俺は同じアベでもバカな晋三とでは字が違う。自分でも呆れるほど、俺は強運で渋太いから簡単には死なない。  
そうだ、もうひとつ。最近見た映画で凄く面白くて考えさせられる映画があった。  
「帰って来たヒットラー」というタイトルのドイツ映画だ。現代のドイツにタイムスリップしたヒットラーが巻き起こす騒動を描いた映画なのだが、笑っているだけではいられない。
この映画の原作がドイツで二百万部を超すベストセラーになっていることにもびっくりした。興味のある人は是非見て欲しい。


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