第201回 『オリバー・ストーンを讃える』


歳をとって時間が出来ると、男も女も老人はいろんな趣味や暇つぶしを見つけて没頭する。羨ましく思うものもあれば、「こいつアホか?」と呆れ返る連中もいる。
別に、健康オタクになるのもフラダンスに熱中するのも良いが、プロが撮した素晴らしい絵葉書がいくらでも買えるのに、自分のカメラで撮ろうとヨタヨタ汽車を追いかけ線路に落ちたり、見るからに知的にお粗末な総理大臣を、あたかも日本の救世主のように囃し立て、円安・株高に熱狂するのはド阿呆だ。  

俺は、歴史にのめり込んだ。いくら俺が歴史を知ったところで、しょせん“歴史は繰り返す”のだから、これも真に空しい暇つぶしだとも思う。
「義務教育で、大昔から歴史を順に辿るのは間違いよ。今、起こっていることから始めて、少しずつ遡っていった方がいい。その方が興味を持続出来るし、関連性が理解しやすい。縄文時代や平安朝なんて知らなくても困らないし、興味があれば自分で学ぶわよ」と言ったのは、慶應義塾大学を卒業したウニのママで、この24年間、亭主の持つ結婚生活最長不倒記録を更新し続けているウチの女房殿だ。  
都立石神井高校でも慶應義塾大学・法学部でも、歴史の授業は爆睡していたらしく、女房殿は2.26事件が起こった年も知らなければ、1865年にアメリカの南北戦争が終わったことも知らない。フランス革命も全然興味がないらしい。基本的にノンポリだが、選挙権を得てからずっと共産党に投票し続けているヘンな女だ。  
しかし、悪夢のような大震災や原発事故から始めて、鳩山由紀夫に菅直人の民主党政権、戦後日本をつくった自民党の長期政権、冷戦や第二次世界大戦…と遡って行けば、結果とそれを生み出したものが見えてくる。  
今自分が生きている時代と、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんの時代くらいまでは確かに繋がっていると感覚的に分かる。素晴らしい提案だと俺は思う。ネアンデルタール人や卑弥呼は、最後の最後にちょこっと教えればいい。  

入っては追い出されを繰り返し、高校を7年かかって22歳で卒業した(最後は夜学だった)俺は、日本史の授業で一番初めに出て来る「古代国家の成立」を、3回も4回も聞いている。  
そしてなぜか、明治維新・日清・日露戦争あたりで、高校の教師たちは急にトーンダウンする。わざと時間切れを図っているかのように…。 7年通った高校では、第二次世界大戦のことも、天皇のことも、占領のことも詳しくは教えなかった。俺たちの頃でさえほとんど触れなかったのだから、若い人たちは日本はずっと民主主義の平和国家だと思っているんじゃないだろうか?  
大人たちが勝手にタブー視して、本当のことを見えないようにするのはケシカランし、越権行為だ。グローバル化して世界で勝負をしなければいけない若い人たちが、自分の国のことをちゃんと知らないのでは恥を掻く。

俺が映画監督の中では一番好きなオリバー・ストーンも、同じことを考えたようだ。  
NHKで深夜に始まった、BSドキュメンタリー「オリバー・ストーンが語る〜もうひとつのアメリカ史」を俺は毎晩見ている。
オリバー・ストーンは、これまで綺麗ごとにして語られることがなかったアメリカの歴史と人物を、圧倒的な迫力と説得力で語りかける。1時間番組で第10回まで続くのだが、俺は5回見たところだ。次は来月の6日から始まる。  
目からウロコの想いだが、オリバー・ストーンは常識を覆しているのだから、批判も凄まじいだろう。こういう番組を深夜のBSでもオンエアしてくれるNHKは有り難い。高い受信料も払ってやろう。


目次へ戻る