第198回 『外に出るのも楽しいじゃないか』


このところ引き籠もりがちだった俺だが、この2週間ほどは外に出て、いろいろな方にお目にかかった。
まずNHKに行き、久し振りで番組に出演した。「100分de名著」というEテレの番組だ。タレントの伊集院光さんと武内陶子アナの進行で古今東西の名著をひと月に1冊取り上げて、毎週25分づつ4回100分で分析しようという番組だ。  
俺は12月の「星の王子さま」と1月の「般若心経」を見ている。毎月その名著に詳しい専門家が一人招かれて解説をする。最終週はゲストを加えて、その作品をさらに読み解くというものだ。  
2月に取り上げる名著は、アレクサンドル・デュマの「モンテ・クリスト伯」で、解説者は作家の佐藤賢一さん、俺が最終週のゲストだった。  
NHKのプロデューサーに岩波文庫の「モンテ・クリスト伯」を7冊暮れに渡されて、「しっかり読んでおいて下さい」と言われた。1冊400ページもあるんだから気が遠くなる。「星の王子さま」なら15分で読める。「般若心経」なんてたった262文字なのに、なんで俺には2800ページもある「モンテ・クリスト伯」なんだ。  
この本は若い頃から何度か好きで読んでいるが、改めてちゃんと読み直さなければ恥を掻く。  
当日NHKの控え室で弁当を食べていた女房殿に、「今テストされても85点か90点は取れると思うほど集中して読んだけど、ギャラは“星の王子さま”や“般若心経”よりずっと高いんだろうな」と訊いたら、「本の厚さで ギャラが決まるワケじゃなし、このお弁当の様子では無理そうよ」と言う。  
昔に較べたらNHKの弁当は、経費節減なのか哀しいほどだった。俺はこの話があった時、司会が伊集院光さんだったからギャラも訊かずに受けた。この俺が痩せて見える伊集院さんと小堺一機さんを、俺は信頼している。この二人は節度があって心利いた人たちなのだ。他の粗野で野卑な芸人とは違う。  
スタジオに入ったら、みんなにこやかに迎えてくれた。「なんで俺が超長い2800ページもある“モンテ・クリスト伯”なんだ。俺が前科モンだから脱獄ものなんだろう」と、カメラが回り始める前に言ったら、伊集院さんも佐藤賢一さんも武内アナまで揃って曖昧な顔で微笑む。図星だったからに違いない。  
楽しく笑っているうちに、無事に収録は終わった。放送は2月27日(水)午後11時からなので、興味があったら見て下さい。  

そして先週は浜松で、漫画家のちばてつやさんと里中満智子さんにお目にかかった。 ノンフィクション作家の谷川彰英さんのMCで、漫画についてのトークショーをやったんだ。ちばさんとは何度もお目にかかっている。
ゴルフやそのあとの飲み会やパーティーなどで、いつもニコニコして人柄の素晴らしい方なんだ。里中さんもとても素敵な方だった。お話しも上手くて、お二方とも漫画界の重鎮なのにとっても気さくで楽しい。  
続けて山田詠美さんと隔月でやっている対談が吉祥寺であった。仕事の後は編集長や編集者、まとめてくださるライターさんと一緒に旨い肴で酒を呑んだ。  
外に出ると楽しいことばかりではないと知っているから、歳を取るとつい出不精になる。 俺もそうなのだが、やはり仕事であれプライベートであれ、人と会わなくなってはダメだと痛感する。  

話は突然変わるが俺は再度、禁煙に挑戦することになってしまった。後期高齢者になって命が惜しくなったのではない。タバコ銭が無くなったのでもない。女房殿は「タバコが嫌いな若い娘が出来たのか?」と思って俺のコートや携帯をゴソゴソやるかもしれないが、爺ぃの俺がそんなにモテるわけない。  
以前“離煙パイプ”という禁煙グッズの広告に出ていたのだが、俺がまた吸い始めたのを見て、その会社が「またヤレ」と言ってきたのだ。  
タバコをやめて90キロから6キロ肥った身体も86キロまで減らしたし、老い先そんなに長くはないのだから、もう好きにしていいだろうとも思っていたのだが、俺はウチの日本一可愛い、世界でも五本の指には絶対に入るウニに、もっと俺のことを好きになって貰いたいから、また“離煙パイプ”を使うことに決めたのだ。  
“離煙パイプ”を銜えれば、タバコを普段通り吸ううちに、マジックのようにタバコが止められる。強い意志なんか要らない。これは俺自身、既に一度経験済みなのだ。  
タバコの煙が好きなネコは一匹もいない。ウニは、俺がタバコを吸うと顔を顰めて遠ざかる。俺はウニにもっとスリスリされたい。
女房殿が疑っている剛力彩芽や壇蜜のせいでは断じてない。 


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