第182回 『再起動と再稼働』


止まっていた原発を動かして、再び発電することを、朝日新聞もNHKも“再稼働”と言う。政治家も評論家も右にならえで、再稼働を連発する。  
NHKの国会中継で俺が軽蔑している野田首相が、明確に「大飯原発の“再起動”を……」と言ったのを聞いて、俺はビックリした。止まっている施設を再び動かして儲けたい側の人間(この場合は電力会社だ)が使う言葉が、“再稼働”だ。 電力会社ではない、外部の人間が“再稼働”なんて言葉を使うのはおかしい。“再起動”と野田総理のようにちゃんと言え。普段は松下政経塾と野田内閣の悪口しか言わない俺だが、この一点だけ褒めてやる。
「稼」と「起」では、うちのウニとベンガル虎ほどの違いがある。言葉の違いが分からない奴は、善と悪はおろか虎も猫も区別が付かない。  

みんながラガーマンと妙なことを言っている時に、一人だけ“ラガー”と言う人がいると、それだけでとても目立つし、俺は「ああ、同じ言葉を喋る人がいた」と分かって嬉しくなる。  
ポパイは漫画の主人公だから、“ポパイ・ザ・セイラーマン”で、普通の港にいる船乗りは、“マン”なんか付かない“セイラー”だ。  
銀行家のことをバンカーマン、野球の投手をピッチャーマンというか?戯画化した時を除いて、人間の状態や職業にマンは付けない。  
日本で最初にラグビー選手のことを“ラガ−マン”と言い出したのは、昭和40年代のTBSのドラマで、違和感があったが俺は黙っていた。作家ではなくホームページもなかったからだ。ラグビーをする男は“ラガー”で、ラガーマンではない。  

俺はそれしか満足に使えないから、日本語を大事にしている。日本語で生活し、日本語で収入を得て飯を喰っている。  
オバカテレビに出て来る日本人は、なぜ「……に怒りを覚えます」なんて日本語を喋るんだろう。「腹が立ちます」と言ったのでは、教養が無い人と思われるとでも考えているのだろうか?  
なぜ女も男も判で押したように、「……だと思います」と言うんだ。タイムリーヒットを打った選手に、インタビュアが「いい所で打ちましたね」と言うと、10人のうち9人までが、「ええ、上手く打てて、良かったと思います」なんて言う。  
昭和40年頃までは女も男も、こんな場面で「はい、上手く打てました」と言ったものだ。  
こんな責任を回避する曖昧な日本語は、オバカテレビが使い始めて、都合がいいから政治家が覚えて、どんどん一般的になった。  
それにオバカテレビと、松下政経塾の政治家が使う、過剰な謙譲語は聞き苦しい。なんでも「いただかせて、いただく」でいいもんか。バカヤロ! 
自分たちが絶滅した方がいい連中だから、可愛くもなんともないトキが生き延びたことを、大騒ぎするんだ。  
“提供”、“食事”、“女性”、“想定外”なんて言葉は、役所か病院以外で使うのは止めよう。文部大臣は、こんな日本語を喋る奴から罰金を取れ。  

ところで“想定外”で思い出したんだが、日本全国54ヶ所の原発のテロリスト対策は、充分なのか。ちゃんと自衛隊が、フル装備で24時間警備をしているのか。(しているワケないよな)  副大臣が常駐したってそんなモン、屁の突っ張りにもならない。副大臣がいればテロリストも撃退できるし、地震も遠慮して起こらないのか?  
今の国会のやり取りを見ていると、机上の空論を通り越して、マンガとしか俺には思えない。 テロリストではなくタダの頭のイカレた奴でも、日本の原発ならブッ壊せる。そうなったらまた“想定外”か。
野田の言う「政治生命を懸けて」とか「乾坤一擲」とか「不退転の決意」という大袈裟な言葉は、国民に向けて言っているようには聞こえない。
財務省の偉いさんに向けての「誓い」の言葉か、「服従」の言葉だ。聞いていて胸クソが悪くなる。  

野田内閣も東電もダメだ。
老い耄れた俺が夢想するのは、若い日本人のクーデターだ。


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