第164回 『科学者頑張れ!』

この“あんぽんたんな日々”も今回で164回目だ。皆様の御愛読に暑く、じゃなかった厚く御礼を申し上げる。
こんな御礼は100回目とか200回目の節目にやるのだろうが、俺は気がついた時にやる。明日自分がクタばるか、天地がひっくり返るような出来事が起こるかもしれない。先のことはもう、ほとんど読めないのだ。だからなんでも思った時に言っておく。  
毎回アップしてくれる義理の甥っ子、タツオさん。どうもお世話さまでした。実は俺が自分でアップ出来るのは、“酒場の戯れ言”だけなんだ。
この「大人気ないオトナ」を始めた時に、俺は日に30人、月に1000人の方に見ていただきたいと思った。最初から大勢の読者を期待していたわけではない。  
俺は誰にでも好かれる作家ではないと自分でもよく承知している。更新もマイペースでやっている。だから毎日ホンの数人の方でも読んでいただければ、それで大満足だった。それが今日で読者は延べ85万人に達したのだから、素直に嬉しい。  

どうやら日本海に抜けた台風だが、運がいい俺はなんの被害にも遭わなかった。一昨日、歯医者さんで奥歯にインプラントを嵌めてもらった俺が、いつものように三鷹駅の方へは向かわずに井の頭通りに出たのは、スーパーの紀ノ国屋へ行こうという気があったからだ。  
紀ノ国屋には他の店では買えない旨い物が揃っている。牛肉は高いが、俺が知る限り一番旨い。バラ肉のブロックを1.5キロほど買いたかったのだが、懐がちょっと不安だったので、俺はまた今度にしようと思ってタクシーを止めた。これが大幸運だった。  
俺は普段財布にいくら入っているか、正確には知らない。充分持っているか、まあまああるか、スカンピンかだけ分かっていれば、たいていの場合恥はかかずに済む。作家という仕事は、自分の財布の中身を知らなくても、結構やっていられるんだ。
その時、俺の懐にあったお金は二万数千円で、紀ノ国屋で盛大に買い物をするのには、ちょっと不安があった。帰りのタクシー代も三千円は見ておかなければ、この歳で逮捕されることになる。 日本一旨いバラ肉のブロックを1.5キロ買えば、100グラム1000円としてそれだけで15750円も払わなければならない。 だいたい俺はスーパーでも100円ショップでも商品がズラリと並んでいると、それだけで嬉しくなってハイになる。そしてついつい棚に手が伸びて商品をカゴに抛り込んでしまうのだ。  
だから女房殿と一緒に買い物に行くと、勝手にカゴに抛り込んだのを見咎められて、「これ棚に戻してきて」と冷たく言い渡されて、いつも哀しい想いをするんだ。一人の時はこの手を止めてくれる人がいない。 もっと金を持っている時にしようと思った俺は、紀ノ国屋の100メートル手前のところでタクシーを止めた。すると空が一天にわかにかき曇って、頭の上でプールの底が抜けたような、凄まじい雨が降り始めた。運転手さんが「ワイパーが全然効かない」と悲鳴をあげる。  
紀ノ国屋に行って値段を暗算しながらヨチヨチ買い物なんかしていたら、間違いなく俺は濡れネズミになって、肺炎かコレラに罹って死んでいただろう。(コレラは関係ないか…)  
俺は台風の余波のゲリラ豪雨の被害には遭わず、無事に家に帰った。運が良かった。不謹慎だからホームページでしか書かないが、運が良いことが人間の全てだと、実は固く信じている。いい女房に巡り会ったことも、可愛いウニに恵まれたことも、こんな歳まで生き長らえたのも、みんな俺が強運だったからだ。  

今回のノロノロ台風は、西日本に甚大な被害をもたらした。それにしても科学者はなぜ台風をなんとか出来ないのか。自然をなんとかしようと思うのが、そもそも人間の奢りなのだろうが…。  
しかしタネなしスイカもタネなし葡萄も出来たじゃないか。ついでにマンゴーのタネも早く無くして欲しい。


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