第156回 『裁判もナシの処刑』

俺は若気の至りで14回有罪判決を喰らった前科モンだ。最後の判決は36年前の1975年だった。

現地時間の5月2日未明、オバマ大統領はパキスタンのイスラマバード北60キロの隠れ家で、ビン・ラディンを射殺したことを誇らしげに発表した。
アメリカの公式発表はケネディ大統領の暗殺事件も、トンキン湾事件もウソばかりで鵜呑みには出来ないが、DNA鑑定をして本人と確認してから水葬したという。遺体の写真が公表されたのだが、すぐイギリスのガーディアン紙は、2年前の写真を合成したものだとスッパ抜く。
しかし10年も捜し回って、やっと“アメリカの敵”を殺したのだからメディアは大喜びだ。CNNの女アナウンサーなんか宝くじが当たったか、思いがけない遺産でも入ったような機嫌の良さだった。バカは日本のアナウンサーだけではない。  
ホワイトハウスの前とグラウンドゼロには、深夜なのに人々が大勢集まって、「USA、USA」と叫んでいる。みんなビン・ラディンが殺されたことを喜んで、胸のつかえが下りたようだ。
俺は別にアルカイダ贔屓じゃない。厚切りのローストビーフに大リーグを愛する年季の入ったアメリカンボーイだ。今だって地震のせいでショートホープが買えないから、さてどうしようと考えた末、キャメルを選んだ。
しかし、アルカイダが9.11テロをやったからといって、ビン・ラディンを処刑したことを、こんなに喜ぶのは俺には違和感がある。
圧倒的な軍事力を持っているアメリカが、隠れ家に潜んでいた容疑者を、拘束・逮捕できなかったわけはないだろう。裁判ナシで“問答無用”と射殺したのは、暗黒街の流儀で民主主義国家のそれではない。
だいたい俺は、9.11がアルカイダがやったテロかどうか疑問に思っている。ペンタゴンに突っ込んだのは、ハイジャックされた旅客機じゃない。長い翼も巨きな尾翼も残っていないじゃないか。マンハッタンのツインタワービルも、旅客機の激突でメルトダウンするのにはカロリーが足りないと、建設業界の専門家は言っている。
アメリカも日本も、権力者が暗黒街の手口で気に入らぬ者の命を取る。俺は裁判をしてもらって、運良くこうして生き残った。裁判もナシで地獄に行くのは寿命が来た時でたくさんだ!

俺のゴールデンウィークは家籠もりだ。東電のせいで漁師さんたちは大変だから、せめて刺身をたくさん喰って、〆張鶴か美酒爛漫を家呑みしよう。

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