第154回 『秘密結社の話』

「フリーメイソン」とか「鷹の爪」なんて秘密結社は数限りなくあって、それぞれ秘密のベールに包まれて妖しい匂いがする。  「クライサンサマム・オーレ」は、男のホモセクシャルが秘かに集まった組織で、戦前は「大和裏門連合」と称していたし、「世界スピード連盟日本支部」は、フェミルアミノプロパン(要は覚醒剤だ)を愛用する連中の、世界的だと称している秘密結社だ。  
話のマクラに例をあげただけで、もちろん俺はどの秘密結社にも属していない。はっきりは分からないが、女房殿は「小池晃を都知事にする会」のメンバーで、飼い猫のウニは「マタタビと鯛」の理事らしい。  

日本で一番古い秘密結社は、明治の初めに結成された「九州独立党」だ。俺はいつか小説に書こうと、このネタをずっと暖めている。“とても”が六回付くほど面白いから、そっとみんなに聞かせてあげる。  
製鉄会社だって酒造会社だって日本一のがあるし、銀行も新聞社もあって、石炭と鰹節、それに警察官と陸海軍は世界一だ。東京では粗末にされている天皇陛下をお迎えして、この際日本国から独立しようというのが九州独立党の悲願で、年に一度党員総会をやる。  
普段の集まりは、日時と場所を書いたレポをタバコの箱や雑誌に挟んでそっと手渡ししたりしているのだが、警視庁の公安は失礼にもまるで相手にしていない。公安のリストには百年以上も前から「九州独立党」の名前が筆頭に載っているのに、明らかに軽んじられているからメンバーはカリカリしている。  
独立したらこんな公安は、まとめて玄界灘に抛り込んでやると息巻くのだが、そうこうしているうちに明治も大正も、六十余年続いた昭和も終わってしまったのだから、理事も平会員もどんどん代が代わり、みんな焦りを募らしている。  
バカにしている公安にもちゃんと理屈はあるのだ。両方の言い分を公平に聞くのが民主主義だと、俺は小学校の時に教師から教わった。  
公安のお巡りが言うには、「独立党の連中は九州中から、みんなコソコソ寿司屋の二階かなんかに集まって、最初のうちはやれ憲法の草案だとか、国旗だ国歌だと嬉しそうにやっているんだけど、首都をどこに置くかという話になると、それまで小声でボソボソ喋っていた佐賀の男まで、大声で喚き立てる。ただでさえ訛りがあって話が通じにくいのに、一斉にそれぞれ主張するから何がなんだかワケが分からなくなる。最後は決まって殴り合いだ。毎度慣れっこの寿司屋のオヤジが、ここで警察に電話してくるから、俺たち公安じゃなくて交番の制服が逮捕して、始末書でパイだ。これじゃバカにされても仕方ないだろ」ということなのだ。  

平成二十三年現在まだ「九州独立党」は健在で、年に何度だか知らないけど会合を持っている。インターネットで検索したら、ブログは管理人が退会したので閉鎖したらしい。  
なんで俺はこんな話を始めたのか。  
大阪の橋下知事が独立するのに違いないと思うからだ。カンカラ内閣と、東電と経産省の醜態と惨状を見ていれば、日本国に税金を納めるのがアホらしくなる。  
立て飢えたる者よ。暁は来ぬ♪  
バンザイ!マンセイ!ジンダバッ!
革命だ。独立だ。


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