第147回 『トラが静かに去って行く』

いつから始めたのか、ちょっと思い出せないほど長くやった「デイリースポーツ」の連載が、この大晦日で終わりになる。何にでも寿命があると言っても、二十年も続いた連載が終わるのは感無量だ。
デイリースポーツからたった今、お餞別が届いた。編集部の皆さん、読者の皆様、長い間、本当に有難うございました。
隠居された軽尾さん。軽尾さんに僕を薦めてくださった山口洋子さん。心から厚く御礼申し上げます。有難うございます。

十年前は大変な忙しさで、酒もろくに呑めなかった年の暮れだが、今年は楽なものだ。昨日の夜で締め切りのある原稿は全部書き終えて、メールで編集部に送った。 
明日は女房殿のポーターで三浦屋に行って、栗きんとんと蒲鉾を俺が撰ぶ。ウニはお留守番だ。今年は豆きんとんも買ってやろうと、言えば反対されるに決まっているから、俺は秘かに考えている。
こんな、どうでもいいことをあーだこーだと考えている俺は、なんという幸せな爺ぃだろうとつくづく思う。
今年も我が家は平和で安全だった。俺は歳並みに老いぼれたけど、女房殿もウニも益々元気だ。
来年は七十四だが、俺はまだ隠居じゃない。「婦人公論」では山田詠美さんと連載が始まったばかりで、「週刊大衆」の連載は自己週刊誌連載記録を更新し続けている。
七十四は俺のラッキーナンバーだ。野球の背番号もそうだし、今乗っている車も74のナンバーにしている。麻布中学の受験番号も、橋本龍太郎が1073番で俺が1074番だった。このラッキーナンバーの謂われが、「ナシのナオちゃん」だったなんてことは、女房殿もウニも知らない。
七十四歳になる2011年は、俺にとっていいことばかり起こるのに決まっている。
黒木メイサやソニンとは恋に落ちなくてもいい。宝クジも三億円なんか当たらなくてもいい。戦争と喧嘩、それに地震と火事だけ起こらなければ、競馬・競輪と宝クジで百万円ぐらい儲ければ充分だ。

そうだ!正月はお屠蘇代わりにハイボールを、巨きなグラスで74杯呑もう。姫始めも74回やる。本気だ。ウニの尻尾も74回引っ張ってやる。


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