第127回 『俺よりそそっかしい奴ら』

俺はウィンタースポーツとは無縁だ。
実は俺はネコだから、冬は暖かい寝心地のいいところでうつらうつらしている。雪も氷も、もとは水で溶ければ必ずピチャピチャグチャグチャすると分かっているから、俺はスキーもスケートも、リュージュもカーリングもやらない。
安藤美姫はスポーツ選手としては稀な、個性的でチャーミングな女だが、ピチャピチャグチャグチャすると厄介なので、俺はテレビで見るだけにしている。
ネコは無精なのではなく、利口だからウィンタースポーツはやらないが、イヌは単純でちょっとオバカだから雪の中を喜んで走り回ってハァハァ言っている。
スノーモービルがあるのに、いまどきイヌにソリを轢かせる奴をイギリス人は動物虐待で訴えればいい。昔イギリス人の総督が香港とシンガポールの華僑に、可愛いイヌを食べるなと命じた。 
ところが、「なに言ってんだ!お前さんたちが喜んで食べている羊だって可愛いぞ」とシンガポールの華僑は怒って、イヌが食べたい一心で大英帝国から独立したと、俺は友人の鮑(バウ)から聞いたことがある。
犬ゾリもだが、競馬はもっと良くない。温厚な草食動物のウマに、中央競馬会が言うような競走本能なんてものはない。ジョッキーが手綱で煽り、ムチで脅し拍車でギリギリこするから、ウマは必死に走っている。牧場や草原でウマが、鼻面合わせて競走しているのを見た奴がいるか?
いやしねぇだろ。楽しそうにジャレ合っているか、ポコポコ散歩しているだけだ。ライオンが追い掛け、トラが跳びかかるからウマはその時だけ必死に逃げるので、走るのが本能だなんて自民党みたいな嘘をつくな。
「博奕がしたいなら花札かサイコロでやれ。可哀相なウマをムチで叩くな」と、俺は25年前に言ったのだが誰も頷いてくれなかった。 

それにしても、なんて呆れたそそっかしい奴がいるんだ。フィギュアスケートの選手がシューズの紐が切れて演技を中断したり、リュージュの女の子が重量超過違反で失格になったり、スケルトンの選手に至っては検査済みのソリのステッカーを勘違いして剥がしてしまい、これも失格になった。
こんなこと水泳選手がプールで溺れたり、パンツが脱げたりしたのと同じで、考えられないチョンボだろ。
俺だって、早とちりや間違った思い込み、単なるオッチョコチョイで、とんでもない事態を招いたり、再起不能なほどの大失敗をしたことはある。
日本を背負ってなんて、俺は言わない。税金でオリンピックに行ってるんだろ、なんてことも俺は言わない。
若い時に輝かしくて誇らしい経験を持つ幸せな奴と、そんなものにはまるで縁がなかった俺みたいな男との、人生の違いをよく知っているから、こんなそそっかしさや迂闊さが俺は残念でならないんだ。
選手だけじゃない。役員もコーチも橋本聖子もみんな、イヌやウマよりずっとそそっかしくて情けない。


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