第123回 『ウニのお年賀状』

大掃除なんかしない。あんなことは普段汚くしておく奴らのすることで、俺みたいな綺麗好きな男のやることではない。
大掃除はしないし、松飾りも俺は買わない。他の人が自動的に、決まりごととしてやるようなことは絶対にやらないと、この三十年ずっとそう決めている。
アマノジャクだのスネ者だと謗られてもいい。そう、俺は常識とか良識が大嫌いな絶滅危惧種なんだ。
俺が好きな女は誰も出ないから、紅白も見ない。ブスなら我慢できるけど、醜悪なネェチャンや婆さんが出て来ると、目のやり場に困るし何と言っても大事な酒がまずくならぁ。
俺はイモトとかという気味の悪い奴を、嫌っているなんて通り越して、ほとんど怖れている。みんなが好きだから、オバカテレビによく出てくるんだろう。いいよ、分かってる。俺は万年少数派なんだ。
今日までに年内の仕事はほとんど済ませたし、老人科に泌尿器科、それに眼科に整形外科、歯医者さんと全部了えた。
それにしても今年は、あちこち壊れて大変だった。築72年の古家だから仕方ない。
本当に俺は今年危うく目が不自由で、チンバのビッコで、その揚げ句チンポコを輪切りにされるところだった。
会う人ごとに、「大変だ。あちこち壊れて、俺ヘレン・ケラー状態だ」と泣いても、誰も肩を優しく抱いて慰めてなんかくれない。以前ギックリ腰をやったときも、2年前にノロウィルスにやられて悶え苦しんだときも同じだった。
なぜ、どいつもこいつも下駄みたいに、俺が悲惨な状態を訴えても笑いやがるんだ。コレラか癌じゃないと同情しないのが日本の常識なのか。

俺はホームページを書くのが好きだ。ホームページは、差別用語なんて常識の、埒外にある。チンポコの輪切りの危機なんて大事な話も、雑誌や新聞では書けない。
俺は、歳を取ってほとんど無くなった勇気を振り絞って、良識・常識と、それを振り回すド阿呆どもと闘う。ギックリ腰やノロウィルス、それに尿道結石をナメると承知しないぞ。
これから年賀状を書くんだが、2010年の年賀状は、うちのウニがベランダで花の匂いを嗅いでいる写真だ。
2010年はトラ歳で、虎は猫科で、ウニは日本で一番可愛い猫なんだ。俺は今だけ常識や良識を喋っている。


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