第121回 『チンポコの一大事』

 一泊で土佐の高知に行って来た。俺はこの辺りがとても好きで、昔は須崎の太平洋を見晴らす丘の上に、地所を持っていたこともある。
土佐と言わず、四国はどこでも人気(じんき)がよいと、俺は思っているのだが……。

 ……と、ここまで書いて俺は危うくひとつしかない大事な命、じゃなかったチンポコを失う大ピンチに襲われた。
何人かの恩人たちのお陰でどうやら危機を脱したので、続きを書いている。俺は嘘つきじゃないが、ともすると話がほんのちょっと大袈裟になるかも知れない。
一泊の急ぎ旅で土佐に行って、生まの鯖を肴に酔鯨を呑んだところまでは、心身ともに快調だった。
いや心身ともに…と書いたが、あまり正確ではない。酔鯨と鯖があんまり旨かったので、ついそんな気になってしまっただけだ。
チンポコとか、普段は書かないアラレもない言葉を遣わなければ、今回の大ピンチを正確に伝えることは出来ない。朝日新聞やオバカテレビがニュースを正確に報じられないのは、強姦とか輪姦、それにチンポコなんて肝腎な言葉を遣わないからだ。
俺は躊躇わず、分かり易くて正確な言葉を遣う。ピンチを乗り越えて、こうして続きを書いているんだ、誰か文句あっか?

  先週の金曜日の昼過ぎ、羽田から高知行きの飛行機に乗るころから用を足すたびに、ようするにオシッコをするたびにチンポコがチクチク痛んで、俺は不機嫌だった。若いころならいろいろ思い当たることもあったのだが、72の老いぼれだと飼い猫のウニの髭が刺さったぐらいしか思い当たらない。
原因が分からないのは、いまいましくて納得がいかないから、俺は大好きな高知に行ってもホテルから出ず、ダイニングで酔鯨をぬる燗で2本、鯖の刺身で黙々と呑んだ。
翌日の昼、地元出身の山本一力さんたちと仁侠についてイベントで語り合い、すぐ高知空港に行って飛行機の時間まで、ジャコ天を肴に生ビールを2杯呑んで、東京の家に帰った。
なんの挨拶もせずに帰った俺を、メル友の朋子さんは怒っているだろうと思うと、心苦しくて不機嫌が8倍になる。
まる40時間ひとりぼっちで留守番をしていたウニは、「お腹が空いた。もう餓死寸前だ」と玄関で俺に喚きながら、女房にだけ甘えてスリスリするのが気に入らない。
しかしウニのように不機嫌を顕わに出来る者は幸せだ。俺なんか段々痛くなるチンポコの痛みに男らしく堪えて、人前ではニコニコしていた。
高知に出発する前にタップリ4食分、お皿に置いていったのに、食いしんぼのウニは一度に全部喰っちまったのに違いない。女房殿が甘やかし放題にするから、ウニのワガママ猫化が進んでいるのだ。俺の母親がしたように、もっとスパルタンに育てなければいけない。
俺にはつれないウニを見ていると、ますますこの痛みの原因は、ウニの髭のせいだと確信する。そうでなきゃあ、こんなに痛むわけがない。この前、ウニの鼻の頭をペロリと舐めてやったことの意趣返しか。それとも背中にガムテープを貼ったことの仕返しか?

木曜日の昼、痛みに堪えてこの“あんぽんたんな日々”を書き始めたら、女房殿が「大事なトコが痛くなるのは不潔にしているからだ。風呂に入って綺麗にすれば治る」なんて、非科学的なことを言う。  二人と一匹の我が家で、一番偉いのは女房で、代貸しはウニだ。仕方がないので、仕事を中断して風呂に入る。そして痛むチンポコの先を、何気なく触って俺はのけぞった。

病み上がりだから、ちょっと疲れた。近日中に続きを書く。


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