第89回 『西に向かって手を合わせる』

昔、鹿児島県の知事でいらした須賀さんの奥様に、「東に向かって微笑む」という言葉が、鹿児島には有ると教えていただいたことがある。
素敵なものをいただくのは、鹿児島の場合はたいてい東からなので、そういう言葉が生まれたらしいと、知事夫人は仰ったのだ。
俺は今、西に向かって手を合わせる。毎年春に、いかなごの釘煮を送ってくれる神戸のミチコちゃんに、「鬼が笑うけど、どうぞ来年の春も俺を忘れずに、あの旨い釘煮を送ってくれ」なんて、手を合わせているんじゃぁない。

もっと遠くの本州の端の、顔も知らない人たちに向かって、俺は手を合わせる。今、あの総理大臣の椅子を無責任に抛り出した安倍晋三の地元、山口県で衆院の補欠選挙が行われていて、信じられないことに自民党公認で公明党推薦の、国交省の道路役人崩れが優勢だというのだ。
こんなこと、俺は信じたくない。阿呆で無責任の権化の総理が続いて、あまりに非道いことばかり、これでもかというほど繰り返されたから、政治家以上にバカな日本の有権者も、漸くこれ以上自民党にやらせていたら、みんなオカラかダシガラの煮干しになっちまうと、参院選で野党に勝たしたばかりなのだ。

参院選で勝たしてもらった民主党も情け無い烏合の衆で、頭は田中角栄の若い衆だった小沢一郎だ。根っからの自民党体質の爺いだから、野党とか革新の頭が務まる手合いではない。たちまちナベツネに粉を掛けられて、福田とゴソゴソ連立の相談をしていたのがバレて、化けの皮が無惨に剥げた。
それでもまだ、自民党より民主党のほうがマシだと、俺は思っている。民主党も自民党と同じ穴のムジナだから、三年も政権を担当していれば、役人と組んで税金を盗み始めるのに違いないのだが、とにかく一度、自民党とその子分の公明党に、地獄を見せてやるのには、民主党を勝たせるよりないというのが俺の持論だ。

「日刊ゲンダイ」の主張と同じだが、俺が真似したのではない。俺は毎日百二十円か、週末には百三十円払う読者だから、俺が本家でお客様なんだ。

自民党と公明党は本当にセコイ。今度の補選で自民党の候補者の役人崩れは、争点の年金問題もガソリン税も、それに老人医療費の問題にも触れず、ただ「ガソリン税が暫定でなくなれば、地方の道路はどうして造るんだ」とか「二兆六千万円の税金はどうして補填するのか?」みたいなことしか言わないらしい。
岩国の米軍基地の滑走路を、民間利用するなんてことも言いだしていると、俺は聞いた。 自民党の一大事と、それまで反目していた旧佐藤栄作派と旧岸派が大同団結したから、いっぺんで公示前は断然有利とされていた民主党候補は、潮垂れてしまったらしい。

二十七日の投票日まで、俺はただひたすら西の山口県に向かって手を合わせ続ける。
山口県の人ばかりじゃなくて、日本の有権者は、小泉純一郎がやったエセ改革も、事務次官がトカゲの尻尾切りされて、政治家は逃げおおした防衛省もみんな、とっくに忘れている。俺たち日本の有権者は、ほとんどテレビに出てくるオバカタレントと同じレベルなのか。
そうだなんて思いたくない俺は、自民党負けろと必死に念じて、西に向かって手を合わせる。頑張れ!何がなんでも自民党に勝たせるな!

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