第84回 『ゼニボケ日本』

俺は暇だと“2チャンネル”を見る。極くタマに朝日新聞には載っていないような、面白い話が拾えるからだ。
今日はこんな話が出ていた。タイトルは、“理事長らに現金、卒業できず。元医大生母の訴え棄却”というのだ。
“埼玉医科大(毛呂山町)の理事長ら3人に現金を渡したのに卒業できなかったとして、元医大生(45)の母(77)(春日部市)が3人を相手取り、現金の返還と慰謝料800万円を求めた訴訟の判決が24日、さいたま地裁川越支部であった。峯金容子裁判官は「現金は返還されており、原告の損失はなくなっている」として請求を棄却した。
判決などによると、男性は1985年に同大に入学したが、96年まで卒業試験に合格できず、退学した。
母親は97〜98年、理事長と当時の学務委員長、教務課長に「卒業お礼」として少なくとも計310万円を渡し、男性は98、99年に再入学試験を受けたが、不合格となった。
教務課長は2000年、母親方を訪れ、ポストに現金310万円を入れて返却した。原告は控訴する方針。”
このニュースには、少し俺の推測を加えないと、細部が分からない。
この四十五歳の出来の悪い男は、普通だと6年で卒業できるところを、11年かかってもダメで、医科大学は12年しか居られないから、母親の婆さんは、理事長以下三人に賄賂を310万円包んで、もう一度息子を、改めて同大学に入学させようとしたのだ。今度こそ6年で卒業できる、なにか根拠があったのだろうと、俺は思う。
それが入学試験に落ちたのだから、婆さんは猛烈に怒った。
埼玉医科大学の偉い三人が、どの時点で310万円を返そうとしたのか、この記事でははっきりしたことは分からない。受け取った時、すぐにではなく、婆さんが烈火のごとく怒った時だと、俺は推測する。
婆さんが起こした訴訟は、“現金の返還と慰謝料800万円を払え”というものだったから、この時点でまだ、310万円は原告に返還されていない、と思うのが普通だ。
婆さんが怒ったので、理事長たちは、一度懐に入れた金を、「ゴタついたからヤバイ」と、教務課長に返しに行かせたのだが、こいつがいい加減な野郎だったから、ポストに抛り込んで帰って来たということらしい。
婆さんの弁護士は、何を理由に800万円の慰謝料を請求したのか。11年かかって卒業できない中年男を、再入学させるなんてカラ約束でもしていたのなら、慰謝料も分からないじゃないが、どんなにゼニボケしていた理事長でも、そんな約束なんか310万円ポッチでするわけがない。
文章は全て原文のママで、(2008年1月25日・・読売新聞)とある。この原稿を書くための資料にしようと、印刷していた俺は、2チャンネラーの書き込みが、延々三十枚にも達するのを知って、紙の無駄だと途中で、「印刷中止」をクリックした。
2チャンネラーは、七十七歳の母親の払った賄賂の金額の少なさに呆れ、四十五歳のこの息子が、医者に成れなかったことを喜び、そして、学校側の金の返し方とタイミングをいぶかっている。
俺はウイキペディアで、このおかしな金の返し方をする医科大学のことを調べてみた。
入間郡の毛呂山町にある1972(昭和47)年に出来た大学で、学費は6年間で4000万円だと書いてある。4000万円を6で割ると、月謝は年に約667万円だ。
先日、日大の芸術学部にゲスト講師として呼ばれた俺は、月謝が年に144万円だと知って仰天したが、医科大学はその四倍以上だから、これは仰天なんてレベルではない。
大学には莫大な私学助成金が、毎年出ている。正確に帝京大学がいくら、安倍晋三が卒業した成蹊大学がナンボと知らないから、莫大と書いたが億単位の驚くべき数字だ。それだけ取って、まだ月謝をこんなにふんだくるんだから、学校は儲かるけど親は大変だ。
埼玉の婆さんは、バカな息子ほど可愛いから、高い月謝を11年も払って、その挙げ句310万円もへそくりを出した。再入学の試験に受かったら、更に最低で6年間は月謝を払うつもりだったのだから、この婆さんの財力と執念は凄い。
ハタで見ている人間は、そんなモンが医者になんかなったら、世間に迷惑を掛けるに違いないから、諦めて違う道を探させろと言うだろう。
しかし金額の多い少ないでは無く、これは親心なんだ。俺の母親も、出来の悪い次男坊が可愛かったらしい。死ぬまで宝くじを買い続けて、「お前は大学へ行ってないから、当たったら大学に行かせてやる」と、もう中年になっていた俺に言っていた。
それにしても女の裁判官は、一度貰った310万円を、ポストなんかに放り込んで返却したことにした、何ともいい加減で非常識な教務課長に、なぜ罰を喰らわさないんだ。

目次へ戻る