第62回 『抛っておけない疑問』


俺は涼しくなってからずっと、資料の山に埋まって、仕事部屋に籠もっている。
読み耽ってはいるが、決して楽しい資料ではない。むしろ陰惨で、おまけに政治家と役人、
それに産業人が一緒になって、お粗末極まる絵図を描いた事故、ではなくて事件の検証を、学問のない俺が酒を呑むのも忘れて、熱中している。
二十一年前に群馬県の御巣鷹山に、日本航空の123便が激突して、五百二十人の死者が出たクラッシュの資料だ。

ケネディ大統領の狙撃暗殺事件は、オズワルドの単独犯行としたウオーレン委員会の結論は
真実ではないと、今ではほぼ完全に否定されているが、真相は闇の中で、世界とその歴史は嘘ばかりなので、一度首を突っ込むともうどうにもならない。
女房殿はそんな俺を見て、滝川クリステルにうつつを抜かすより、まだマシだと思っているらしく、
文句は何も言わないが、内心バカなことを懲りずに、また始めたという顔をしている。 
多分いくら調べても好奇心をいくらか満足させるだけで、小説や漫画のネタにはならないと、当人の俺も思う。
けど、この謎解きは、一度始めるとちょっとやそっとでは止められない。

ほとんどの日本のカタギは、マンハッタンの貿易センタービルとペンタゴンが破壊された9.11事件が、アメリカ政府の発表どおりアルカイダがやったテロだと、信じている。
俺は、そうじゃないんだ。
テロの首謀者ビン・ラディンには、CIAの影が付きまとっているし、ほんの数ヶ月、練習したくらいの腕で、大型ジェット機を貿易センタービルの、此処しかないというドンピシャリの所に、ぶつけられるもんか。
貿易センタービルはともかく、ペンタゴンに大型ジェットがぶち当たったとは、俺にはとうてい思えない。
アメリカ政府の発表を鵜呑みにしているのは、何も物を考えない日本の平和ボケ連中だけだ。
インターネットには、とても読み切れないほど、政府の公式見解を疑い否定するいろんな専門家や軍人の研究や推測が、 それこそ山のように詰まっている。
俺は先に、“123便の墜落”に首を突っ込んだから、9.11にまでは首が回らない。

二十一年前の御巣鷹山のクラッシュで、一番怪しいのは事故調(事故調査委員会)が出した結論と、 それにボイスレコーダーを、乗員のプライバシーを保護するという理由で、全公開しなかったことだ。
事故調が出した「急減圧で圧力隔壁が破れ、その結果、垂直尾翼が吹き飛んで墜落した」という報告が、そのまま政府の公式見解となって定着している。
しかし、急減圧なんか無かったのだ。
今まで資料を見た限り、生き残ったスチュワデスの証言もあるし、
それに日本航空乗員組合も、急減圧は無かったと断言している。
急減圧が無ければ、圧力隔壁も破れないし、垂直尾翼が吹き飛ぶことも、四系統もある油圧システムが全部壊れて、
その結果コントロールを失った123便が御巣鷹山に激突することも無かった。

俺より若かった坂本九も、まだ元気に「上を向いて歩こう」と、唱っていただろう。
日本のカタギは事故調査委員会なんて聞くと、実態をよく知らないのに、権威を信じてしまうのだから、ほとんど小学生並の頭だ。
俺たちの先代の日本人は、最後には必ず神風が吹いて、アメリカ軍をやっつけてくれると、大真面目に信じて太平洋戦争を闘った。
なんでも権力者が言ったことは、疑いもせずに信じることが美徳だったのだ。
今でも日本人のほとんどは、なにも疑わずに生きている。
事故調は運輸省の組織だから、政府や日本航空、それに機体を製造したボーイング社の不利になる報告や結論は、出すわけがない。
ボーイング社はその結論に添って、異常に早く同機の過去の修理ミスを自白し、日本航空は莫大な弔慰金を支払って、この事件の幕を引いた。
航空機の製造会社が自分のした修理ミスを、自ら認めるなんて前代未聞だ。
ハッキリ言って、政府と事故調は嘘をつき、日本航空はでっち上げの片棒を積極的に担いだと、俺は確信する。 
俺は一介の野人だ。裁判ごっこをしているわけじゃない。
嘘だと確信したから、クラッシュの真因を一所懸命、女房殿に呆れられながら調べている。
何も考えずに信じるカタギばかりじゃないことが、資料を見ていてわかったのが俺は嬉しい。

このクラッシュには、驚くほどいろんな説があるんだ。
自衛隊の無人標的機ファイアービーが、ぶつかったという説。「日本怪死人列伝」では俺もこの説を採った。
アメリカ軍の軍用機が、123便の垂直尾翼を掠ったという説もある。
いや、急減圧は無かったけど、ジワジワ漏れた気圧が、設計ミスで金属疲労が限界に来ていた尾翼を、吹き飛ばしたのだという説もある。
一番驚いたのは、同機に乗っていたグリコ・森永事件の犯人を時の総理大臣、中曽根康弘が、
逮捕・起訴・裁判・有罪確定・刑の執行という正規の方法を取らず、また取れない事情があって、乗客や乗員もろとも抹殺したという説だ。
死体は、死体の山に隠せ……と言うのだから、この発想は凄い。
確かにグリコ・森永事件は、目撃証人も多く証拠も沢山あったのに、遂に犯人が特定できずに迷宮入りしている。
権力は、どんな非道でも行うというのは、ブッシュ大統領が、イラク戦争の理由とした
大量破壊兵器の保有を、今になって、「いくら捜しても無かった」と、ヌケヌケと言ったことでも分かるだろう。
中曽根康弘が何かの理由で、五百二十四人が乗った123便を、「たった一人を殺す為に」撃墜したとしても、
俺は、ただ目を瞑るだけで驚かない。権力は何時でも非情で、だから俺は反権力なのだ。


こんな資料が二十一年分あって、まだやっと三分の一、目を通しただけだ。
事故調が嘘をついたのが原因で、俺は迷路の中をあても無く彷徨うことになる。
日本で五本の指に入る大嘘つきが、こんなことになったのは、バチが当たったのかも知れない。


読者の皆様、御巣鷹山の日本航空123便の墜落で、御存知のことがあれば、仮名でもハンドルネームでも結構です。
どうか僕に、お教えくださいませ。


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