第61回 『野球漬けの日々』


このところ毎日テレビに、囓り付いていた。
俺はもともと、熱狂的なプロ野球ファンだ。
昨日の晩なんか三時間も、仕事の話は何もしないで、編集者と日本ハムの森本と、ドラゴンスの井端のことばかり喋っていた。この二人はバッティングもいいのだが、守備がドが付くほど素晴らしい。これが、お金の取れる商売人のプレーだ。
アマチュアは名誉の為に野球をすれば、それでいいのだが、プロは素人には真似の出来ない闘志と技術で、見る者に感動を与えなければならない。
このプロとアマチュアの違いが、やる側も見る側もはっきり分かっていないから、野球に限らず日本のスポーツは、未熟で下らなくなっていく。  
俺はパシフィック・リーグのプレーオフから日本シリーズ、それにMLBのプレーオフからワールドシリーズと、連日ほとんどテレビの前に座っていた。

しかし、今季の終盤のプロ野球は久し振りで、日本もアメリカも面白かった。去年、素晴らしい野球を見せてくれたロッテは、今年は出て来なかったが、西武とソフトバンクをプレーオフで負かした日本ハムが凄い野球をやったのだ。
新庄は、今まで誰もやったことのない、一つ間違えれば泥臭くて、ただの目立ちたがりのパフォーマンスになり兼ねないことを、次々と繰り広げたが、俺みたいな、若い人気者には極端に点の辛い爺いでも、しまいには新庄流に乗せられて、思わず拍手したり涙ぐんだりしたのだから、このハンサムな野球選手は、天才的なショーマンだったと感心する。
シーズン中に、勝っていた試合の五回ツーアウト満塁で監督に交代させられて、怒って監督批判をして二百万円の罰金を取られたエースの金村は、ゴメンナサイと謝って謹慎を解かれ、日本シリーズの第四戦に先発して見事に勝った。
俺は五回に、ヒルマン監督がマウンドに行ったのを見て、「あッ。ここで代えると、今度こそ大喧嘩になる」と、息を呑んだのだが、二人とも大人だから無事で済んだ。
札幌ドームで見ていた人も、テレビを見ていたファンもみんな、五回二死三塁でのヒルマン監督の続投指令に胸を撫で下ろした筈だ。
 
翌日のデイリースポーツの見出しは、「頭を下げて男を上げた」で、これは整理マンのセンスが光る。こんな粋な見出しを付ける新聞が、なぜ名古屋と博多では売れないのか。
中日スポーツと西日本スポーツしか読まないのだから、味噌カツと水炊きは、俺は喰ってやらない。
昔のお侍みたいな顔の小笠原は、よく守り、よく走って決して手を抜かない。ドラゴンスのウッズもそうだ。西武のカブレラみたいにチンタラして、一所懸命走らない奴はプロじゃない。
こんなプレーで白けない人は、福井日銀総裁を見ても、八十三人の小泉チルドレンを見ても腹を立てないアホンダラだ。

日本ハムには、本当にユニークな男が多い。
帽子やヘルメットが飛ぶと、ギョッとする森本だが、慣れるとそれが愛嬌になる。
森本は素敵なフォームで走る。まるでサバンナを、槍を握って黒犀を追うマサイ族だ。
こんなダイナミックで華麗な走り方をする選手は、読売巨人軍には一人もいない。   セントルイス・カーディナルスの田口壮も、俺は大好きだ。
こういう注意力があって、堅実なプレーをする縁の下の力持ちが、今の読売巨人軍には居ないから野球が詰まらなくなって、テレビ屋共は実況中継をやらなくなった。

イチロー、松井秀、井口、城島、大家に大塚、それに斉藤隆と、俺の宝物がMLBに去ったが、それよりも田口が居なくなったのが俺には、大きい。
田口は、「盆に明るい」、「盆が見える」日本一のプレイヤーだった。盆暗ではないから、監督が頼りにするスーパーサブが務まるんだ。
何度誉めても、誉め足りない。田口壮は日本の誇りだ。
ワールド・チャンピオンおめでとう。君こそチャンピオン・リングに相応しい。


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