第53回 『いつでも不機嫌で腹を立てている俺』


選手には何人か好きなのがいるのだが、俺はナベツネと、その取り巻きや子分が大嫌いだから「読売ジャイアンツ」が好きになれない。
プロ野球の方が断然サッカーより好きなのだが、最近そのプロ野球の人気に翳りが見え始めて、テレビのナイター中継も、あの下らないバラエティとやらにも負けてしまうというんだ。
目を背けるほど非道く程度の低い、バラエティより視聴率が取れないのなら、来年から民放テレビはナイター中継をやめるかもしれない。
テレビ局はもともと、好きなのは視聴率だけで、プロ野球が好きなわけじゃない。俺はテレビ局の浅墓さに腹を立て、内容のないことを休みなく喋り続けるアナウンサーに、不機嫌になる。
今や俺はナイター中継だけではなくて、ほとんど全ての物事に腹を立て顔を顰める。
嫌いなのはナベツネだけであるものか。
名前をちゃんと呼ぶのが嫌だから、青芋虫女と呼んでいる少子化対策担当大臣や、片山さつき、それに川口順子なんかは、飯が不味くなるから飯の前には出喰わさないようにしている。

俺が嫌いなのは女の政治屋だけではない。男の国会議員は、そのほとんどが大嫌いで、顔も見たくなければ、声が聞こえて来るとゾッとするんだ。頬白鮫やカマキリ、鰐よりも、政治屋が嫌いだ。
俳優や芸人にも、好きな奴より嫌いな奴の方が、俺は断然桁違いに多い。
昔、俺が幼かった頃、家の周囲に住んでいた年寄りは、揃って機嫌が悪い爺婆ばかりだった。紀子サマや美智子サマみたいに、いつでも薄気味悪く微笑んでいる婆さんなんか、一人もいなかった。少なくとも記憶にない。爺さんはもっと居なかった。

自分がそうなって、誰でも歳を取ると機嫌が悪くなるのだと分かる。
歳を取っても機嫌がいい奴は、TBSが飽きずにやっている変なドラマや、なんの感動も与えない、読売ジャイアンツの野球を喜んで見ている爺婆だと、俺は決めているんだ。
こういう人たちに、自公政権は支えられているのに違いないと、俺は思う。
 
こんな、なんでも気に入らない俺が最近、とても喜んだ日本映画がある。
「寝ずの番」だ。達者な俳優が揃っている映画は、最近の日本では牡の三毛猫よりまだ珍しい。木村佳乃は大竹しのぶと同じほど芝居が上手いんだ。
それに加えて、表情と立ち居振る舞いが下司くないのが、俺は気に入っている。木村佳乃は黒木瞳や「黒革の手帳」の女優とは、桁違いの巣晴らしさだ。
それにこの映画は珍しく、俺を笑わせてくれた。今の特にテレビには、大人を笑わせてくれる映像もなければ、ニヤリとさせる場面さえない。これは作る奴が無能だからか、それともタダだからなのか。
「寝ずの番」には、入場料を払う値打ちがある。
 
結局この世の中は、弱者が徹底的に餌食にされ、奴隷にされる所だから、それに気が付いた爺婆は絶望して、機嫌が悪くなるのだ。
最近の日本では圧倒的に多くなった、それに気が付かない爺婆は、けど幸せに生きている。
全て見ざる聞かざるで過ごす人生と、どちらが幸せなのか。言ってしまえば、どちらが得なのか、俺はこの頃そんなことばかり考えている。

これは老人性の欝病ではなくて、鈍感な方が生き易いという、絶望なのだ。


目次へ戻る