第50回 『史上最高の一夜』

3月3日  

「ヤングサンデー」で三年前から連載してる“RAINBOW 二舎六房の七人”で、小学館漫画賞を頂いて今日はその授賞式と祝賀パーティだった。  
第五十一回だから、昨日や今日できた賞じゃない。  
“ゴルゴ13”のさいとう・たかを先生が、乾杯の御発声にわざわざ会場の帝国ホテルに来てくださるというんだから、担当編集者の福本青年が「タキシードを着てください」と言うのも分かる。  
自分の仕事が評価されて、賞をいただくのが、俺は断然嬉しい。
見栄も気取りも照れもポーズもなしに、嬉しくてたまらないんだ。  
人間いくつになっても、けなされるより誉められる方がいいのに決まってる。  
とにかく昭和五十八年から書いて来て、賞らしい賞をもらったのは初めてだから、俺は前の日にいきつけの床雅に行って綺麗にした。  
ヤンサンの三上編集長が、タキシードよりディナージャケットの方がいいと言ったから、俺は古いディナージャケットを出して、女房殿にブラッシをかけてもらう。  
クルーズ客船、飛鳥やパシフィックビーナスの仕事が入らなければ、こんな礼服やお洒落着は、保存に気を遣うだけなのだ。  
エナメルの靴は二十年前に、上月晃さんと御一緒した時にパリの靴屋で買ったものだ。 
大事に納っておいたのを、出してまた履くんだから、つくづく靴屋は儲からないと思う。
一張羅を着込むと、腕を取って御一緒した方たちのことを、懐かしく想い出す。  
上月さんも江利チエミさんも、俺が振られたのではなくて、肝腎な御本人があの世に旅立ってしまった。  
そんなことを想ってグズグズしていると、鬼より怖い女房殿に感付かれるから、俺は急いで小学館が手配してくれたハイヤーに乗り込む。  
しかし、小学館は本当によくしてくださる。 書いても書いても売れない俺の原作を、二十年も我慢してくれたから、今日という晴れの日があったのだ。  
六時から六時半の授賞式、六時半から八時までの祝賀パーティーと無事に済んで、銀座のダッフィーに二次会で繰り込む。  
竹書房の鈴木さんと、トモちゃんにテンコちゃん。日企のカオルちゃんとジェフ夫妻も、キョウコちゃんと一緒に来てくれる。
世界で一番綺麗な蒼井そらちゃんが、俺に花束を渡してチュッをしてくれた。  
満員のダッフィーで、弘兼憲史さんや森末慎二さん、それにやまさき十三さん、武論尊さん、とがしやすたかさんといった方たちが、代わる代わるスピーチをしてくださる。  
俺は汗まみれで、お礼を言い、握手をし、頭を下げる。女房殿も会場の何処かでおなじことをやっていたのに違いない。  
これまでこの「あんぽんたんな日々」では、写真は載せなかったが、俺がどんな相棒と漫画の連載をやっているのか皆様に知っていただきたかったので、この写 真を載せる。  
日本ハムの小笠原じゃなくて、左にいるイケメンが柿崎正澄画伯、右はお祝いに来てくださった「タッチ」のあだち充先生だ。  



賞を獲って呑む酒は旨い。こんなに旨いのなら、また獲ってやろうと俺は想う。  
三月四日の朝四時に俺は、ようやく眠った。 


目次へ戻る