第32回 『黒船ホリエモン』

3月6日
テレビには何時でもホリエモンが映っている。
去年の夏は無能なプロ野球経営者たちを、慌てふためかせたこの若者は、今度は志の低いマスコミの爺いたちを追い込んでいる。
普段、面倒を見てもらっている自民党の政治屋たちは、フジサンケイグループの一大事と、やれ、電波の公共性とか株の時間外取引はどうだとか、忠義面 をして吼えている。
新聞やテレビが、こんな総会屋みたいな連中の遠吼えを、まともに報じているのを俺は冷ややかに見詰めて、なにも言わずに酒だけグイグイ呑む。
こんなものは、見るのも目の穢れだ。
日本の大新聞とテレビは、自分で調べた事実を、自分の主観で報じる姿勢が欠落している。
ガキとオバさんを、喜ばしたり騙すだけの目を背ける番組を作り続けて、なにが電波の公共性だ。
自民党と公明党の爺婆は、寝言は選挙区で吼えてろ。
こんなことは、堤義明に納税の大切なことを教えられるのと同じだ。
口先だけで生きているプロなら、せめて俺みたいに、もっと気の利いたことを吼えてみやがれ。

しかし、そうは言っても、女優を愛人にして六本木ヒルズに住み、フェラーリに乗る若い男が、爺いの俺が好きであるわけがない。
ただでさえ俺みたいな爺いは、自分が喪った若さに嫉妬するから、若い男には点が辛いんだ。
額に汗せず、企業買収とIT産業とやらで濡れ手に粟の大金を稼ぐホリエモンを俺は、まっとうなカタギとは思っていない。
日本の大新聞とテレビ、それに自民党と公明党が嫌いな俺だが、だからと言ってホリエモンにベッタリでもないんだ。
ホリエモンとフジサンケイグループの喧嘩は、無能で怠慢なバカ爺いと、頭が良くて勇気のあるチンピラの勝負だと俺は決めている。

思っているのではなく、決めているんだ。
「何々だと思います」という卑怯で曖昧な言葉を俺は遣わない。
ニッポン放送のアナウンサー崩れの社長は、小利口な胡麻擂り爺いで、フジテレビの巡査部長みたいな社長は、ヤケッパチのゴロツキだと俺は決めている。

だから俺は心情的にはホリエモンのサイドだ。
なぜか?それはホリエモンの方が、考えるし勇気があるからだ。
ホリエモンに株を担保に八百億円貸したリーマンブラザーズって金貸しは、そこいらの日本の銀行やオリックスなんかと、桁も歴史も違う大金貸しなんだ。
日露戦争の時に、人口僅かに三千八百万人の農業国日本が、強大なロシアと闘う戦費に遣う外債を、リーマンブラザーズは引き受けたんだから、竹中小僧に預金金利をゼロにしてもらって、大儲けをしてる日本の強盗か乞食みたいな銀行とはモノが違う。
金貸しとしての理念と価値観が違うんだ。

そこからホリエモンは、フジサンケイグループと、決戦する資金を八百億円も借りたんだから、これだけでニッポン放送の卑屈な社長とは、人間が違う。
今の日本の爺婆は、なぜか考えるのを止めた。
ノウノ法務大臣も小泉純一郎も、物事を真剣に考えようとしないんだ。
考えない人間は、ただの猿より惨めな生き物だから、ほぼナマケモノと同じだと俺は思っている。
ナマケモノは時速十八メートルだと聞いたのだが、酒場で聞いたことだから面 白いけど鵜呑みにするわけにはいかない。

とにかく政治屋に限らず現代日本の爺婆は、ろくに物を考えないから、日本はどんどん駄 目になる。
ナベツネも海老ジョンイルも、それに橋本龍太郎や堤義明もなにも考えずに、城の天守閣から下々を見下ろして油断していたから、晩節を汚した。
みっともなくて目を背けるのは、爺様ばかりじゃなくて婆様だって素敵な人は一人もいない。
そんなことはノウノ大臣と土井たか子を見てれば充分で、他の有象無象は思い出したくもない。

今の日本で、誰か素晴らしい年長者が一人でもいたかと、俺は考えてみた。
いたッ。
一人だけ確かにいた。
敬語を遣って、いらっしゃったと言わなければ、俺が嘲笑されてしまう。
元ヤマト運輸のトップ小倉昌男さんだ。 政治屋と役人を相手に、敢然と正論を唱え闘い続けた方だ。
平成六年にヤマト運輸の会長を退かれてからは、私財二十四億円を投じてヤマト福祉財団を設立し、障害者を支援しておいでになる。
しかし、このヤマト運輸の元会長さんしか、素晴らしい年長者が思い出せないのだから、本当に今の日本は情けない。
ノウノ法務大臣やNHKの海老ジョンイル、それに堤義明なんて連中が目立つだけだ。
黒Tシャツのホリエモンは、幕末の江戸湾に姿を見せた黒船で、ろくに考えず、勇気もない爺婆を恐怖させた。
好き嫌いは別にして、ホリエモンはよく考えるし、それに勝負に打って出る勇気もある。

俺は喧嘩が始まると必ず、自分の旗印を明らかにする。
サッチーと浅香光代の喧嘩でも、ブッシュとフセインの喧嘩でも俺は、勝負のつく前に旗印を決めたんだ。
逮捕され完全に失脚してから、テレビに出ていろいろ愚痴を言う堤義明の番頭や側近たちみたいな卑怯なことは、俺はしたくないんだ。
 


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