第24回 『負けた将軍は大統領には向かない』


11月06日
オハイオ州が四年前のフロリダ州みたいに、とてもアメリカとは思えないことで開票がもたついた。
ただ今回は民主党のケリー候補が、粘らずにブッシュ大統領に翌日、敗北宣言をして、長かった大統領選はやっと終わった。
小泉純一郎と、その幹事長は喜んだが、俺はガッカリしたんだ。
ブッシュがフロリダの知事をしている弟と、一緒に映っていたテレビを見て、俺は背筋が寒くなった。
こんな西部劇の敵役のような兄弟を、知事はおろか大統領にするなんて、俺の大好きなアメリカは、狂ってしまったとしか思えない。
人の顔と言動を見れば、たいていどんな奴だか分かるもんじゃないか。
日本の法務大臣と自民党の幹事長の顔と言動を見れば、俺たちには阿呆で無能なオタンコナスだとすぐ分かる。
それがなぜ、現代のアメリカ人には分からないんだ。
ゲイリー・クーパーと、それにアラン・ラッドの西部劇を見ていないから、いい人間とそうじゃない奴の区別 が付かないアメリカ人が増える。
しかし、それにしても、民主党の選んだ大統領候補は、タマが悪過ぎた。
最初に、ベトナム戦争の英雄という触れ込みで、ケリー候補が出て来た時、その顎ばかりの顔を見た俺は、「このケチャップ屋の婿さんは、ボクシングにも大統領にもむいてない」と、言い放ったんだ。

俺はサイゴンが陥落する五日前まで居たから、ベトナム戦争のことは、はっきりくっきり憶えている。
あの戦争はアメリカが、コテンパンに負けたんだ。
B-52で爆撃しても、枯葉剤をいくら撒いても、ベトナム解放軍の旺盛な闘志に圧倒されて、アメリカ軍は尻尾を巻いた。 負けた戦争に英雄の将軍なんか、いて堪るもんか。
負けたアメリカ軍に、もし英雄が居たとすれば、必死に闘った兵卒か下級士官で、将軍なんかであるわけがない。
僅か四半世紀前のことじゃないか。
俺もまだ髪の毛が黒々ふさふさしてた、三十代の若さだったが、忘れるほど遠い昔のことではない。
アメリカ人は沢山、戦死したじゃないか。
若 い命が儚く無残に、無為に散ったのを、俺はこの目で見ている。
それなのにケリー候補は、ベトナム戦争の英雄……将軍として、胸を張って出て来たんだ。
前 科モンの俺がシレッとして、作家になりおおしたのより、もっとずっと桁違いに恥を知らない。
だから俺は、民主党はタマが悪過ぎたと言うんだ。
顔や言動で善い悪いの見分けが付かないアメリカ人も、ベトナムで若い男が無為に死んだのはまだ覚えているんだ。
軍籍が怪しいブッシュと以上に、負けた将軍は印象が悪い。
ただのケチャップ屋の婿の上院議員でございと言って出てくれば、大差で勝っていたに違いないと俺は思っている。

資料を読みに読んでいるので、連載小説が遅れている。 もう暫くの御猶予をと、読者の皆様にお侘びする。


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