第4回 『デイリースポーツ万歳!!』


11月28日(金)  
昼の新幹線でデイリースポーツの“関係者慰安パーティー”に、六甲の宝塚ホテルへ行く。  
俺はもう十六年もデイリースポーツの専属をして、毎日、新聞休日の前日でも宅配が無くても駅売りはあるから、“懲りない編集長”というコラムを書き続けている。  
今年は十八年振りに阪神タイガースが優勝したこともあって、稲垣社長が皆に一杯呑ませて翌日はゴルフをさせてくれるのだ。  
仲のいい江夏豊さん、岡田新阪神監督、針の穴を通すと絶妙なコントロールを謳われた小山正明さん、酒仙投手と異名をとった今井雄太郎さん、ブレーブスのサウスポーでエースだった梶本隆夫さん、オデコでボールを受けた宇野勝さん、阪神タイガースのピッチングコーチの佐藤義則さん、広島カープのエースで、沖縄出身の最初のプロ野球選手、安仁屋宗八さん、それに近鉄のエースで今はプロ野球ニュースの村田辰美さんといった面 々が集まっていた。  
プロ野球が大好きな俺は、ほとんどウットリして皆の話を聞いている。  
酒を呑むと、素面の時の八倍も喋りに喋る俺が、聞き役に回ったのが我ながらおかしい。

梶本さんが小山さんに、
「お前さまは、針の穴だけど、俺は電車の吊輪もよう通さんかった」  
と、言ったのがとてもおかしかった。
しかし、プロ野球の元選手は歳を取ってもよく酒を呑む。  
江夏豊さんは、丸谷才一さんと同じマンションに住んでいるのだそうだ。  
丸谷才一さんは作家の先輩の中で、何処がお気に入ったのか有難いことに、俺にとても良くして下さるのだが、江夏豊さんと同じマンションに住んでいらっしゃるというのは、何とも言えず絵になる。

11月29日(土) 
有馬ロイヤルは俺のレヴェルがゴルフをする所じゃない。  
それも元プロ野球選手のコンペだということで、バックティーから打たされたんだから、俺のような百獣(110)の王には、苛められたと同じだ。  この十五年で、こんなに打ったことなんか覚えが無い。  
元プロは爺様になっても、皆とても上手い。  
女房殿は俺サマのお陰でブービー賞がいただけたのだ。  
ゴルフの後、デイリースポーツの軽尾さんが山田さんと一緒に、食心坊(くいしんぼう)という焼肉屋に連れていって下さる。  
この際だからついでに書いておくが、俺はラーメンテン、トンカツテンと言うのが嫌いだ。
こんな馬鹿なことは、みんな民放テレビの青二才がはじめた日本語の破壊だが、それなら床屋をトコテンと言うのか、この馬鹿野郎!  
食心坊は焼肉屋で、だからビックリするほど旨い三田牛を喰わせた。  
こういう店を知っているのは男の器量の内だと、俺はつくづく思う。  
ヤキニクテンなんて馬鹿な言葉を臆面も無く遣うテレビ局の小僧共は、何を喰っても分からない青くて惨めな豚なのだ。


11月30日(日)  
神戸の宿はデイリースポーツの岡本さんが、インターネットで、ニューオータニにツインを予約してくださった。 値段は俺は女房殿から聞かされなかったが、格安だったというのだからパソコンの腕は間違いなく俺より上だ。  
しかし、デイリーの方は皆さん本当にとても良くして下さる。  
そのホテル・ニューオータニはチェックインの時に、1800円の朝飯を1500円に、300円の割り引き券をくれたんだ。
心中密かに苦笑したのだが、しかし、これが上方の流儀だと思わないでもない。  
300円の割り引きを苦笑するのは、関東男の雑な心根なのかもしれない。  
女房殿と二人で600円、それが積もればエライ違いや……と、考えるのが上方流なのだ。  

東京の五反田から須磨の安部家に嫁に行った母は、父が死ぬと俺をつかまえて、58年我慢した関東と上方の微妙な違いを、死ぬ までボヤキ続けたのだから、末っ子の俺は間違いなく母方の遺伝子を濃く受け継いでいる。  
雨がザンザン降っていたので荷物もあることだし、須磨寺にお墓参りに行くのはやめて、新幹線で家に帰る。  
どうやら無事に11月が終わって、年内はもう旅行の予定はない。


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